『アンソロジー光』(2019年)

『アンソロジー光』参加者様

拝啓
霜秋の折、皆様におかれましては、ますますご清栄のことと心よりお喜び申し上げます。
早速ではございますが、私も寄稿しました『アンソロジー光』の感想を――と言いたいところですが、感想は上手く書けませんでした。
そこで、参加者の皆様へ宛てた手紙を書く、という形でそれをお伝えすることといたしました。拙い文章ではございますが、ご一読いただけますと幸いです。
小説集「LIGHT」からイラスト集「PHOTON」へと、冊子の掲載順に記載しております。
また小説作品につきまして、個人的に印象に残った文章を引用しておりますが、ネタバレとなる部分があるかもしれません。あらかじめご了承くださいますよう、お願い申し上げます。

 

~LIGHT~

 

佐々木海月様「サムウェア・オブスキュラ」

「写真は、写した人の記憶だからね」

写真のような、写した人の記憶をのぞいて見ているようでした。冒頭部分が好きです。ヨサリとユウの関係性というか、あの距離感が良かったです。たとえ喧嘩をしてもどちらからともなく仲直りをするような……。ふたりには、写真を撮り続けてほしいと思いました。

 

早房透人様「わたしのせかいのはなし」
地上で生きるお姉さんと水の中で生きる私、のお話――。「私」の視点で語られる、服の描写が新鮮に感じられました。「私」はお姉さんが食べたという、「ニンギョ」と人に名指される存在であることを知ったとき、どう思うのだろうかと考えました。また、お姉さんはどんな経緯から「ニンギョ」を食べたのか、その背景を想像してしまいます。

それをしなかったのは私だけれど、そこに根を張ったのはあの木だ。あの子の選択だ。きっと、大丈夫なのだろう。大丈夫だと思ったから、あの場所で育つことを決めたのだ。

 

深瀬空乃様「憧憬」

 それでも、撮りたい。

そう思えるまでに費やした時間も、「大きな壁にぶつかっても、それを迂回しているような気が」しても、決して無駄ではなかったのだと、自分のことに置き換えながら拝読しました。勇気をいただきました。夏希の最後の言葉が好きです。彼女の演技をこの目で見てみたい。

 

住本優様「ヒカリノワ」
同級生の相談とやらに付き合ったり、男子と会話し家まで送ってもらったり……月並みですが、これが青春か――と思いました。変わらない日常から変わっていく日常と思い……。そこが丁寧に描写されていたことで、最後の詩歌の行動に繋がったのだなと思いました。

 薄情だけれど、私の頭を埋め尽くすのは、家族のことでも友人のことでもなかった。

 

氷晶様「ある夜、丘の上にて」
当初、切なげな印象を受けました。ですがお話が進んでいくうちに、一歩一歩進んでいく決意を固めた、月だけれど月ではない彼女を、太陽だと思いました。

「月は太陽がないと輝けないんだぞ。」

――太陽もまたそうであると、私は思います。

 

田畑農耕地様「PSⅡにさよならを」
拝読後、すぐブルーベリーの花言葉を調べました。高薮さんの含みのある言動に気になりながらも読み進め、真相が分かったとき思わず膝を打ちました。二回、三回と何度も読むことで味がしみ出てくる小説だと感じました。

「私を引っ張ってくれて、ありがとうございました」

今後もお互いを引っ張り、引っ張られながらときに「実現できない夢を見」て、それでも実現させていくような、そんなふたりのこれからを想像しました。

 

燐果様「ライフ・ゴーズ・オン」
イェヌスとウェヌス、イェヌスとウェヌス……繰り返し言いたいくらいにいい響きがします。この世界でも良くはないだろう行為に、トゥバンの労いの言葉によってふたりの行為が報われたのだ、と思いました。朝焼けを眺めたいです。

「あんたに何がわかる……ぼくらには帰る場所がある! 帰るんだ!」

 

折田奈知様「夕焼けの彼方」
長期休暇を取ってのんびりしようと思っても、早々に飽きてしまう気持ちに共感……そうして図書館に行くまでがワンセットみたいな。ほのかと祥子の掛け合いがまさしく青春で、眩しいです。

 本を読むことは、私の拠り所の一つだった。

心理描写がとても丁寧に書かれていて、私も喉が熱くなりました。その後のお話と、ほのかが書いた読書感想文の書き方を読みたいです、熱望します。

 

骨平正樹様「unwilling world」
「普通」とは何なのだろうかと、よく考えます。その前に付く「正しい」とはさらに何なのだろうかと、今回拝読して考えました。答えはまだ出ていません。みんな、人それぞれの「普通」があって、自分のそれで他者を見ているのでしょうかね。その「普通」のフィルターを外して見る、もしくは外さずともそのまま他者の思う「普通」と向き合うことが、「多様性と向き合う」ということなのでしょうか。一石を投じるようなお話を書いてくださり、感謝します。

 多様性と向き合っていける彼女の方が、よほど格好良いと感じた。

 

汐木カチヤ様「Aurora」
世界観と登場人物の設定が好きです。ライトが名前の通り光の役割をはたしていて、良い主従だと思いました。続きの物語があるように感じました。今度は光の国が舞台だったり、また三人が一堂に会したりする話を拝読したいです。「光と闇の間の子」という言葉が好きです。あわいの子どもは、幸福になるべきだと私は思っています。

「よってたかって子供に口さがなく面罵する悪意に、同調する必要がどこにある?」

 

こうあま様「よわたりの光」
夜を渡る権利、夜に参画する……言葉のセンスに脱帽しました。この言語感覚、見習いたいです。

「ほんとうは……わかってもらえたら、それだけでやっていける。きっとそうよね。だって正しく伝われば、自然に、必要なぶんだけの配慮を考えられるわ。伝わらないから余計なことばかりされる。余計なことをされているからますます苦しくなる」

この部分に共感しました。正しく伝わりさえすれば、苦しさは幾分かマシになります。だから伝えることを諦めてはいけないのではないかと、私は思っています。でもそれは、なかなか難しいことではありますが。

 

冬月由貴様「嘲風弄月」
恥ずかしながら、タイトルとなっている言葉を知らなかったので、まず意味を調べてみました。お話の中身と合っていて、これ以上のタイトルはないのだ、と言わんばかりの四文字で、声に出して読みたくなりました。互いに歌を詠み合って人知れず交流する高校生――これが青春、とまざまざと実感させられました。よきかな……。

一つ一つの棚を見回るとき、僕は木の医者になる。(中略)遠めに等しく見える彼らの些細な、一文字分の違いを正していく。そうして最後に、ひとひらもらっていくのだ。

 

花音様「かけがえのない三日間と私のかみさまの話」
タイトルのかみさまが、ひらがなであることで柔らかい印象を受け、良いなと思いました。りっちゃんもみっちゃんも、ふたりともかわいいです。

石橋を叩いて叩いて叩いてから渡る(後略)

――そういう律だからこそ、ラストの「またね」になったのだと思いました。さようならではなく。律が作ったお弁当を食べたいです。

 

紅藤あらん様「ソル」
リーは、ただただ純粋無垢な人なんだな、と思いました。村が焼かれる描写と村が焼かれたあとの描写、どちらもリーの心情とともに、上手く表現されていると感じ取れました。そっと文中に挿入されている「美少年」という単語に、思わず笑みがこぼれました。いいですね、美少年……。「太陽」はずっと、リーを世界を照らし続けるのでしょうね。

 白一面の中でリーはただ少年に手を伸ばす。

 

薄明一座様「煌々として橙」
ポンポンポンっと、テンポが良くて、あっという間に読み終わってしまいました。ふたりの性格の違いからくる、お店で料理を食べ始めるときのタイミングなど、人物描写が上手いな、と思いました。これは続きのお話が絶対ありますよね。角木姉妹の正体、分かるような、分からないような……。想像するのが楽しいです。

「……あのさ、紅。アンタ、その口調全然似合ってない」

 

不可村天晴様「生まれる」
詩のような、流れるような地の文で「確かに幸福なはずだった」と言われると、これから一体何が起こるんだ、と少し不安になりました。「私」から「私たち」、「ふたり」から「ひとり」へとなる様が、ハラハラするような幸福であるならそれでいいような、自分でもよく分かっていない心地になったのを覚えています。実際の光を私は目にしていないのに、眩しくて目を眇めました。

私は私を生かすのに飽きていた。

 

樹真一様「ひかりを見上げる」
現在から過去へと回想していく描写が切れ目なく、鮮やかでした。

 年に一回だけでも、亜光速で移動してれば、私の一年の中に何度も水樹の「年に一回」が積み重なるから。それだけで十分だから。

その後、きちんと積み重なっているのが分かってしまい、泣きたくなりました。今年のふたご座流星群のときに、また拝読させていただきます。見上げ続けて、ひかりを呼びます。

 

花月小鞠様「郵便屋さんと月の住人」
エマの、適応力が高くて目を見張ります。上から人が降ってきたら、それも月からだと言われたら、すぐに納得できる自信が私にはありません。

「こんなものって言わないでください。大切なお手紙なんです」

心温まるお手紙を届けてくれる郵便配達員さんには、いつも感謝しております。またお手紙が書きたい。テンポが良くてスラスラと読むことができました。クラウスが住む月に行ってみたいです。

 

真朱水也様「花影のゆびきり」
これ以上は蛇足となるところの、ギリギリの部分で終わったように見受けられました。でも続きが気になります……。少女のささやきに、胸が痛くなりました。いくつもの魂が混ざった花梨と、幼い姿ながらも老成した主人……ふたりの関係性がやっぱり気になります。

 そんなにつよい赤ならば。

 

オノイチカ様「ソルティエラ -太陽と王国の記-」
ソルティエラって国名の単語からして素敵で、何度も声に出して読みたいと思いました。李関連の描写が甘美で甘美で……はたして私にはこれが書けるのだろうか、と考えてしまいました。

「僕の望みは、すべて叶えられる」

傍点が付いていることでより強調されていて、なんだか伏したくなりました。光の祭りハヌカに行ってみたいです。対比がまさかこうなるとは、こういうことだったとは……。

 

天霧朱雀様「vivid flash back.」
「ログ散らかして歩いている」という文章が好きです。「冗長化した回路は備わっていな」いのに、冗長性を含んだ会話をたくさんしているところがもう、好きです。

「デッドロックした思考で、君は生きていると言えるのか」

自らに何度となく問いかけ、そして答えたい言葉だと思いました。読み終わったあと、ページをめくり直し、もう一度冒頭部分を読みたい作品です。

 

紫水街様「ストレイライト・リバース」
別れが近付いているのを惜しむように、静かにゆっくりと物語が進んでいったように感じましたが、最後は畳みかけるように終わり、圧巻でした。ふたりの別れが辛く、「再会」もまた、一抹の辛さも沸き起こりました。

「君はこの景色を、綺麗だと……そう思うかい?」

 

仲野識様「夏菊の廃園」
相関図を見ながら読みたいな、と思ったお話でした。三人称から一人称が続き、そしてまた三人称へ――構成が巧みで脱帽しました。拝読後、改めて菊の花について調べてみたら……黄色……、赤色……、白色……。「真実」が手折られなくて本当に良かった、と思いました。

嘘と、偽りと、隠された感情に守られた日々でも、それでも彼らにとっては唯一無二の青春だった。

 

和咲結衣様「笹百合の瞳」

「(前略)あなたの足音も、息遣いも、声も、まとう匂いも。全部、あたしは覚えてしまっているんですから」

尊い。無自覚な愛の告白でしょうね、きっと。お互いがお互いにとって光なのが、とてもよく伝わってきました。お互いの名前を呼び合う、このお話の続きが読みたいと再び思いました。

 

東堂冴様「ユートピアには生きられない」
私の勝手な想像ですが、話しかける少し前まで名前を思い出せなかったことにも、彼女なら気付いていそうだなと思いました。それでも名前で呼んでもらえて嬉しかっただろうな、とも。なくせない思い出と十年越しに果たされたお願いが、丁寧に書かれていて十年後にまた拝読したいと思いました。

世界が変わるのはそれで十分だったし、それ以上の思い出も必要ではなかった。

 

育美はに様「まばたきの間に間に」

 どうしてみんなと同じことをしなきゃいけないんだろう。
どうしてみんなと同じことができないのだろう。

拝読していて終始、胸を締め付けられました。「みんな」って、一体誰のことなんでしょうか。一体誰が、「みんな」と同じであれと言うのでしょうか。良い子でも良い子じゃなくても、すべての子どもたちが、枕を濡らすことがありませんようにと祈らずにはいられませんでした。

 

星唄様「祈りの歌姫と鎮めの森」
一行目からグッと、引き込まれました。エル……エル……。少女、かわいいです……。ゆっくり物語が進んでいくかと思えば、途中から駆け足のようになっていきそして、終わりの二行――。これぞ神話。神話を垣間見ることができ、嬉しく思います。

「お姉ちゃんは、まるで絵本の歌姫様みたいね」

 

淡島ほたる様「夜を彩る」

 このひとは、わたしの神様だ。そう思った。

人のことを神様だと思うのは愚かなことだろうか、と思わず考えました。彩夏に対する藍音の思いが丁寧に書かれていて、切なくなりました。ひらがなが多用されていることで読みにくいかと思えば全くそんなことはなく、むしろ一人称ということも相まって藍音の心情に寄り添うことができました。最後の一文が好きです。

 

みずのしまこ様「君と夢見るスポットライト」
〝家に帰りたくない二人が、だらだらと放課後を過ごす会。〟っていいですね。下校時刻のギリギリまで図書室にいた、自分の高校生時代を思い出しました。一分でも長く、ただ図書室にいたかったのです。微笑ましいって言葉がぴったりなふたり……。夢が現実となり、ふたりでスポットライトを浴びることができますように、と願わずにいられません。

 光があればどうしたって影ができるものなんだと。

 

蒼木遥か様「『災害の記録』より「人々の記憶」」
これはまさに、記録であり記憶であると思いました。緊急地震速報の音はいつになっても聞き慣れませんね。聞き慣れたくないですし、聞き慣れてはいけませんが。様々な立場の人たちの視点から描かれていて、色々と考えさせられました。

「町の光は、人々の生活の灯火だ。それが消えているというのは、何もない場所に放り出されるような恐怖感があるな」

 

猿川西瓜様「救世主」
背筋を伸ばして、深呼吸しながら拝読しました。ラップに詳しくなく、またラップバトルが出てくる小説を読んだのは初めてでしたが、戸惑うことなく楽しく拝読できました。ラップを、リリックを文章ではこう表現するんだ……という意味でも大変興味深かったです。

「人は一人一人違うねん、そんなことも知らずにラップしてるのか、俺も一緒だったって、一緒にするな! それがわかるか、ファンにすんな、マイメンにすんな、ステージに降りた後みたいな言葉にまみれてる、それでお客さんの気がまぎれてる?」

 

七瀬亜依香様「星が呼ぶほうへ」
拝読後、感嘆のため息しか出ませんでした。少女たちの交流と触れあい、いいですね……。ふたりの名前の意味が、またいいですね……。閉鎖的な村の描写も的確で、またまたいいですね……。さっきから「いいですね」しかお伝えできておりませんが、それだけ良かったということで、何卒ご容赦くださいませ。ターラのこの言葉に、私も受けた親切はそのまま受け取ろうと改めて思いました。

「受けた親切にあれこれ理由付けしちゃうの、馬鹿みたいだなって」

 

いちか様「16bit Spirits」
胸が張り裂けてしまいそうで、代わりにため息という名の息を吐いています。過去のあるときにした選択と同時に、しなかった選択について、私はたまに思いを馳せることがあります。過去に戻ったとしたら、また同じ選択をするのだろうか。しなかったほうの選択を今度はして、もうひとつの選択肢に思いを馳せるのだろうか――。分からないものですね、人生って。以下の文章、首がもげるほど頷けました。

「くだらねえんだよな。そういう分け方すんのって、意味なくね? 俺も瀬音のこと好きだもん。外崎と仲がいい瀬音が好き。だけど、ちょっと妬くときあるわ。マジで」

 

カレン様「待宵」
ケイの倦みに、私は独りではなかったのだと悟りました。静かに淡々と紡がれるさまに、好感を抱きました。

「ときどきは寂しくなくても、甘えていいと思うよ」

兎のこの言葉を、噛みしめています。いいんだ……。兎に即興で歌を作ってもらいたいです。どんな歌になるのでしょう。願わくは、ケイと兎に幸多からんことを――。

 

秋助様「きっと彼女は光なんかじゃない」
身体面に関して自分のほうが勝っていると思っている、ヨルがかわいかったです。文中にも出てくるタイトルが、いくつもの意味や思いが込められていると感じられ、胸を締め付けられました。

『常に夜が灯る。夜は私達の側でずっと輝いているのよ』
端月依子の名前を好きになれた言葉を、今でもカヒリは覚えているだろうか。忘れてたっていい。私が覚えてるから。

――この文章に、共感しかありませんでした。自分の名前を好きになれたきっかけ。自分の名前が他者から肯定されるということ。嬉しいような、むずがゆいような、救われたような、生きるよすがになるような……。同じ経験があるので、ヨルの気持ちがとてもよく、分かりました。

 

鳥ヰヤキ様「彼方へと往く船」
自転車で坂を駆け上る描写がとてもリアルに感じられました。終盤、ぞくりとすると同時に、切なくなりました。人によっては、肉体が変わらずともアイデンティティ・クライシスに陥る可能性が多分にあるなかで、クローンとはいえ今までの肉体から離れるのでそこからまたアイデンティティを保持できるのかというと、信じられない部分があるのは仕方のないことかもしれませんね。

「私はいつも、完璧であらねばなりませんから」

 

るね様「導き星の子」
実際の舞台を見ているかのようでした。とても見たいです。私も少年へ、最大級の賛辞を送りたくなりました。もちろん、少女へも。またふたりが再会してほしいな、と思いました。またどこかでふたりは会うような気がしました。

「君には歩ける足と考えられる頭がある。悩める心はどうとでもなる。ものの見方を変えればいいんだ」

 

綿津見様「夜陰に鮮明」

 ぽすぽす、と傍らの羽毛枕を叩かれる。そのあたりに掛けろということらしい。逡巡したがおとなしく座った。

ぽすぽす、っていうの表現がかわいかったです。呼び捨てを望むシャーレも。セネカの能力や仕事についての説明が分かりやすく、この世界に没入することができました。翅の描写が美しく、シャーレとの会話も微笑ましかったです。ふたりはきっと大丈夫。確信を持ってそう思います。

 

~PHOTON~

 

雪之達磨様「幕開き」
見ているこちらまで暖かくなるような、そんな気持ちになりました。笑顔になりポカポカです。新しい朝の幕開けのような、春の日差しのような……。濃淡が出て、日差しが差し込んでいる様がよく感じられて、好きです。他の絵も見てみたくなりました。

 

匙於ナゲル様「スターゲイザー」
首筋からチラリとのぞいているタトゥー、好きです。絶妙です。たくさんの書物を紐解いた結果できた光なのか、女の子の表情から色々と想像できるので見ていて飽きません。光に照らされてできた衣服などの陰影がこれまた絶妙で、素敵です。

 

ツクダニ様「echo」
制服の着こなし方、髪型、表情、声の出し方……など、「学生」という同じ枠にはめられて見られがちなふたりでも、ひとりとひとり、それぞれ違う背景を持った人間なんだと見る者に見せつけるような、訴えかけているような、そんなイラストに私は感じました。室内と室外の明るさの対比、暗いなかにあるふたつの明るくて強い光に吸い寄せられました。

 

うさぎ少女様「心象風景」
かわいいです。うさぎも骸骨も。うさぎがテクテクと動き出しそうで、動いて見えて、なおのことかわいいのです。一条の光の描写が好きです。あ、あそこにも、うさぎが……芸が細かくてすごいです……。

 

蒼井万里様「秘密の場所」
まず、微笑む女の子と目が合いました。次に黒猫と。月に照らされて、青色系統で統一されていることで神秘的で幻想的な雰囲気が出ていて素敵です。ワンピースの裾部分が透けて描かれていて宇宙の広がりを感じ、吸い込まれてしまいそうでした。pixivに投稿されていた同じ女の子のイラストも拝見しましたが、また違った印象を受けました。どちらも好きです。

 

おへそ様「おいで、愛しき光よ。」
後光が、後光が、眩しい……。良い意味で眩しくて、私には直視できません。誰かが、この青年に「おいで、愛しき光よ。」と言っているのかなと想像しました。伸ばしかけている手は、誰を、どこを、何を、包むのでしょうか。

 

食塩水様「フィノスの森、午前2時」
やはり、額縁に入れて、家の壁に飾っておきたいと思いました。午前二時という時間帯の選択に、妙な納得感があります。この人物のバックグラウンドが気になりました。

 

夏香子様「煌きは解け、青に還る」
人物が振り返ってしているその表情含め、素敵です。絵のタッチが好みです。この人物が、何かに抱かれているように、私には感じられました。青に還る、いい言葉ですね。青に還る……何度も口に出したくなります。

 

壱箱悠様「何でもない日」
「何でもない日、おめでとう」と思わず言いたくなるような、タイトルと絵に感じました。気持ちの良い風が吹いているなかで本を開く……理想です。本棚にある本はどんな本なのか、読んでみたいと思いました。本を開いているにもかかわらず本ではなく、どこかを見つめている人。どこを見ているのかあるいは見ていないのか、何かを考えているのかいないのか……。コップがまたいいアクセントになっている、と思いました。

 

蓮美かい様「君を導く光となろう」
ふたりの見ているところ(文字?)が違っていて、何故なのか理由はあるのか、興味をそそられます。文字は光とともに散らばっていくのか、容器に入っているものに一定の効果をもたらすのか……。タイトルが、素敵です。この絵が描かれる様子を眺めてみたい、と思いました。

 

花雪様「キラキラな夢の世界へ」
データチェックで拝見しましたが、やはり今も、かわいい……の一言に尽きます。何度拝見しても、雰囲気が優しいと思いました。彼女の見ている夢がキラキラかつ良い夢であることを願っています。

 

ヲキチ様「堕天使トニロの恋の罪」
堕天使……いい。最初、個性的な羽根の形だなと思ったのですが、見方が誤っておりました。口元のそれに納得しました。ああ……。シスターとおぼしき少女は気付いているのか、いないのか……気付いていてほしいような、気付かないままでいてほしいような、複雑な気持ちになりました。どちらにとっても、幸せな結末であってほしいと祈っています。

 

櫻井更紗様「サムシング・ブルー」
まさに「サムシング・ブルー」というタイトルがぴったりの絵ですね。蝶の化身のような女の子だと、秘めやかな結婚式をのぞき見ているようだと思いました。サムシング・ブルーとして実際に贈りたい絵です。

 

神儺様「光待つ庭」
お花のひとつひとつが丹念に描かれていて、すごいと思いました。提灯もきれいで。右側に描かれた人物が、どういう気持ちで眼下を見下ろしているのか、どういう人物なのか、見下ろした先にいる人物との関係などが気になりました。

 

和泉様「光雨」
椅子も机も透明で、向こうが透けて見えるのが好きです。真っ赤な傘だけれど、こちらも少しだけ透けていて、跳ね返っている「光雨」とマッチしているな、と思いました。光の雨、光の飴、光る雨、光る飴……いろんな意味にとれると私は思った、タイトルが素敵です。

 

わかめ様「天の輪」
なんだかこっちまで笑顔になってくるような、素敵な笑顔ですね。かわいい。少女を包んでいるものは何なのか、中心にある球体っぽいものは何なのか、とても気になります。が、少女が笑顔ならば何でもいいかな、という気にもさせられます。

 

ミズキカオル様「シンコウが止まらない!」
シンコウ、とタイトルがカタカナなのがいいですね。どういうシチュエーションなのか、真ん中の少女は一体何者なのか、気になります。尊いうちわ、欲しい……。左下の少年以外、周りにいる人たちがサングラスをかけているのが不思議です。何か理由があるのでしょうね。真ん中の人物と左下の少年が、一番仲よさそうだと勝手に思いました。

 

ちとり様「夢のなかでも」
穏やかな午睡を思わせる絵に、胸が温かくなりました。カーテンが風で揺れているさまが、いつもの日常めいていてなおのこと素敵です。色使いとタッチとタイトルが好きです。

 

ひなたこう様「奇跡の石」
一枚のイラストに、たくさんの物語が散りばめられていて、想像力が掻き立てられます。喜怒哀楽が凝縮されていて、どうしてこの人はこの表情をしているのか、こうなるまでに何があったのか、背景というかもっと深いところが気になりました。上部のふたりの幸せそうな表情が、いっとう好きです。

 

翔汰郎様「あなたに会いに来たのよ」
光に吸い寄せられたあと、ふっと視線をずらせば、何か……いる……。上下左右に回転させ目を凝らして色々な方向から見てみましたが、〝それ〟が何なのか結局分かりませんでした……。描かれている人物の表情すべてが見えないことで、色々と際立っていると思いました。実際のところは本人たちのみぞ知るなのかもしれませんが、タイトルはポジティブな意味であればいいなと願っています。

 

地底と星様「初回起動」
見られている、と、思いました。初めて拝見したときに。その場にいないのに、私はこの子に見られている、と。そして、実際には何を見ているのだろうかと、どうしてその表情なのだろうかと、思わず色々と考えてしまいました。ボディのなかの闇にも目が吸い寄せられました。光と闇の使い方が好きです。

 

月島あやの様「星空ピクニック」
ピクニックの楽しそうな様子が伝わってきました。眩しいけれど眩しくない、散りばめられた星々。ランプがなくてもいいような星の輝きだけれど、ランプがあることで引き立つふたりの表情に、なんだか私まで楽しくなってきました。

 

白兎赤鳥様「泡沫」
目に飛び込んできた眩しい光に、思わず目をしばたたかせました。透けている描写がすごいです。花火とともに、後ろ姿かつ制服が透けて見えていることで、刹那的な感じが上手に表れていてるなと思いました。

 

有郷多嘉良様「光」
ページをめくったとき、真っ先に大きな光が目に入りました。それはきれいで温かな光でした。イラストとともに以前Twitterに投稿された文章も素敵でしたし、この世界観の背景などがどうなっているのか、より想像力を掻き立てられました。

 

漣猗様「replica」
こちらが人物および月を見下ろしているような、またはこちらが人物および月から見下ろされているような、不思議な感じがしました。個人的に、どちらもアリです。衣装が羽根のようにフワフワしているというか、重力を感じていない様が上手く表現されていて、好きです。ひとりで踊っているように見えて、月が見ているから独りではないので、安心しました。

 

以上となります。
最後になりましたが主宰の綿津見様、参加者の皆様、お疲れ様でした。
素敵な光を、ありがとうございました。

 

敬具

2020年11月28日

鈴倉佳代